文化
皇室の保養地に選ばれた、葉山という土地の魅力
明治政府に招かれたドイツ人医師が、逗子・葉山を保養地として推した。
葉山町は1894年(明治27年)、皇室の保養施設である葉山御用邸が開設されたことで知られる「御用邸の町」である。2025年1月に町制施行100周年を迎えたこの町の海辺には、江の島を前景に富士山を望む絶景が広がり、明治政府の招きで来日したドイツ人医師、エルヴィン・フォン・ベルツ博士が、イタリア公使マルチィーノとともに葉山を避暑避寒の地として推したという歴史が残っている。ベルツ博士自身も明治22年には葉山に別荘を持ち、明治37年に土地家屋を売って葉山を去ったとされており、その後、横須賀軍港への物資・人員輸送を目的として横須賀線が開通、逗子駅が開業したことも、この地域の発展を後押しした。
一色海岸にある葉山しおさい公園は、もともと葉山御用邸の付属邸があった場所を公園として整備したもので、園内の葉山しおさい博物館は、旧御用邸付属邸の御車寄を玄関として移築するなど、当時の面影を今に伝えている。もともとは明治期の政財界の要人や陸海軍の将官、学者、芸術家たちが競って別荘を建てたリゾート地であった葉山は、皇室の保養地としての歴史と、別荘文化としての歴史のふたつを併せ持つ、湘南の中でも独特な位置づけの町だといえる。
現在の葉山御用邸そのものは皇室の施設であるため一般には公開されていないが、隣接する葉山しおさい公園や葉山しおさい博物館を通じて、往時の雰囲気の一端に触れることができる。博物館では、海洋生物を熱心に研究された昭和天皇のコレクションも紹介されており、皇室と葉山の海との関わりの深さを知ることができる。静かな別荘地としての葉山の性格は、こうした皇室ゆかりの歴史とも無縁ではない。
皇室の保養地としての歴史と、別荘文化としての歴史のふたつを併せ持つ葉山は、湘南の中でも独特な位置づけの町であり続けている。
葉山しおさい公園・博物館は一色海岸に隣接しており、森戸海岸とあわせて歩いて巡ることができる距離にある。皇室ゆかりの歴史的な背景を知ったうえで景色を眺めると、いつもとは違う奥行きを感じられるはずだ。
森戸海岸を紹介する「観光」カテゴリの記事とあわせて読むと、葉山という町が皇室の保養地としてどのように発展してきたかがより具体的にわかる。
葉山しおさい博物館の展示は定期的に入れ替えられており、訪れるたびに異なるテーマの企画展に出会えることもある。
訪れるたびに新しい企画展に出会えるという点も、この博物館の魅力のひとつだ。
皇室ゆかりの歴史と自然が重なり合う、葉山ならではの場所である。

