観光
日本初の海水浴場は、大磯からはじまった
明治の軍医が漁師を説得して開いた海水浴場が、日本の海水浴文化の原点に。
大磯海水浴場は、明治18年に軍医・松本順(良順)が、漁の妨げになると渋る地元の漁師たちを説得して開設した、日本で最初の海水浴場とされている。当時、西洋医学の考え方をもとに海水浴を療養法として広めようとした松本の働きかけがきっかけとなり、大磯という土地は保養地・別荘地として大きく発展していくことになる。その後、大磯駅は「湘南の海水浴関連遺産」として経済産業省の近代化産業遺産に認定され、関東の駅百選にも選ばれるなど、日本の海水浴文化発祥の地としての歴史的な価値が今も高く評価され続けている。
隣接する大磯ロングビーチは昭和32年に開業したプールリゾートで、全長140メートルのウォータースライダーや波のプール、流れるプールなどを備え、太平洋を望みながら遊べる関東を代表する海辺のリゾートとして親しまれてきた。例年7月上旬から9月中旬にかけて営業し、毎年多くの家族連れで賑わいを見せる。一人の軍医の情熱から始まった小さな取り組みが、やがて日本全国に広がる海水浴という文化そのものを生み出し、さらにその歴史が現代のリゾート施設へと形を変えて受け継がれている。大磯の海岸線には、そうした百年以上にわたる物語が静かに積み重なっている。
大磯ロングビーチは大磯プリンスホテルに併設される形で営業しており、宿泊とセットで一日中海辺のリゾート気分を味わえるのも魅力だ。「大磯は日本の海水浴発祥の地である」という歴史的な事実は、単なる観光アピールにとどまらず、大磯という町全体のブランディングの核になっている。松本順が切り開いたこの海岸線には、療養と保養のための土地という当時の思想が、今もリゾート施設という形を変えて息づいていると言えるだろう。
大磯の海岸線を歩きながら、ここが日本の海水浴文化の出発点だったと想像すると、目の前の景色の見え方が少し変わってくる。歴史はいつも、こうした何気ない浜辺から静かに始まっているのかもしれない。
大磯駅からは徒歩10分ほどで海水浴場に到着でき、ロングビーチへは駅から直行バスが運行される期間もあり、電車利用でも訪れやすい。歴史的な発祥の地という肩書きを持ちながら、今なお現役のレジャー施設として多くの人に利用され続けているという点が、この場所の価値をより一層高めている。
大磯の海水浴文化については、同じ大磯エリアの「人」カテゴリにある松本順の記事とあわせて読むことで、より深く理解することができる。

