文化
激動の昭和を生き抜いた画家の眼——鎌倉市鏑木清方記念美術館、特別展「昭和100年 清方作品にみる日本のこころ」開幕
関東大震災、戦争、戦後——時代の荒波に揺れながら、江戸・明治の美しい記憶を描き続けた鏑木清方。昭和100年の節目に、その精神を鎌倉でたどる。
昭和元年から数えて100年。その節目の秋に、鎌倉の小さな美術館が時代に正面から向き合う特別展を開く。鎌倉市鏑木清方記念美術館(鎌倉市雪ノ下1-5-25)では、10月23日(金)から11月29日(日)まで特別展「昭和100年 清方作品にみる日本のこころ」を開催する。近代日本画の巨匠・鏑木清方(1878〜1972)が昭和という激動の時代をいかに生き、何を描いたか——その問いに肉薄する展覧会だ。
鏑木清方は関東大震災後、心に残る江戸・明治の人々や文化を題材とし、人物画・美人画を描き続けた。戦時中も清澄な作風を貫き、戦災で東京の家を失った後は鎌倉に移住して創作を続けた。今展では、そうした激動の昭和期の作品群に光を当てる。小さな作品や印刷物を総称して清方が「卓上芸術」と呼んだ実践、戦中・戦後の人物画、そして鎌倉移住後の制作まで、作品と随筆を通して時代とのせめぎあいの痕跡をたどる構成となっている。
美術館自体、清方が人生の最晩年を過ごした旧居跡に建てられたものだ。入口の格子戸の門や館内の画室は当時の部材をそのまま使用して復元しており、四季の草花が植えられた中庭も残る。展示室に足を踏み入れると、鎌倉の静寂と清方の画世界が自然に重なって感じられる空間だ。年間を通じて8〜9回の企画展を行うこの美術館は、観光客で賑わう小町通りや鶴岡八幡宮から徒歩圏内にありながら、ひっそりと落ち着いた時間が流れる。今回の特別展をきっかけに、初めて訪れる人も多いだろう。
開館時間は9時から17時(入館は16時30分まで)、休館日は月曜日(祝日の場合は翌平日休館)。観覧料は特別展のため一般450円、小・中学生220円。会期中の11月21日(土)には、長谷川町子の「サザエさん」研究者をゲストに招いたトークイベント「サザエさんにみる昭和の暮らし」も予定されており、絵画とは異なる切り口から昭和という時代を掘り下げる機会も用意されている。紅葉の鎌倉を歩きながら、清方が見つめた「日本のこころ」に触れる秋を——。
