グルメ
海か、古民家か——葉山のカフェランチを選ぶための手がかり
御用邸の町として知られる葉山には、絶景テラスの海側と、住宅街に溶け込む古民家カフェという二つの顔がある。どちらを選ぶかで、ランチの時間はまったく変わってくる。
葉山は、逗子と横須賀のあいだに位置する三浦半島の西側の町だ。明治27年に御用邸が造営されて以来、皇室ゆかりの保養地として栄え、著名人や外国要人の別荘が建ち並んだ。その文脈は現在もカフェ文化に息づいている。国道134号線(旧・行幸道路)沿いを中心に、海の見える洗練されたレストランから、住宅街の路地裏に息を潜める古民家カフェまで、葉山の飲食店は大きく「海側」と「街なか」の二層に分かれる。ランチをどこで食べるかは、葉山のどの顔を見たいかを選ぶことでもある。
森戸海岸や葉山マリーナ沿いに点在する「海側」のカフェは、相模湾と江の島、晴れた日には富士山まで一望できるロケーションを強みにしている。テラス席からは潮風を感じながら食事ができ、観光客にも人気が高い。一方で席数が限られ、週末は待ち時間が生じやすい。また、国道沿いから一本入った森戸川沿いや仙元山の山麓にかけては、築90年超の木造家屋をリノベーションした古民家カフェが点在しており、そのひとつひとつが地域コミュニティの拠点として機能している。カフェ営業日以外はマルシェや社会活動の場として開放される店もあり、単なる飲食店ではなく「地元の居場所」として育てられている。
葉山のカフェランチを選ぶうえでおさえておきたい視点がいくつかある。まず、無農薬ハーブや三浦野菜、地場の魚介を使った食材へのこだわりを持つ店が多い点だ。地産地消の意識は観光地的な演出ではなく、移住者や地元住民が日常的に選び取ってきた積み重ねから生まれている。次に、葉山には駅がないため、逗子駅または逗子・葉山駅からバスでアクセスするか、車で訪れることになる。そのため、渋滞が起きやすい週末の国道134号沿いより、バス路線からやや入った住宅街のカフェのほうが、ゆったりと落ち着いた時間を過ごしやすい傾向がある。「風早橋」バス停周辺や一色エリアには、そうした地域に根ざした店が集まっている。
「観光地化されていない葉山らしい店を探したい」というならば、まず海側の絶景を楽しんだあと、住宅街へと足を向けてみることをすすめたい。古民家の縁側で地元産の野菜を使ったランチを食べ、自家焙煎のコーヒーをゆっくり飲む午後は、葉山の本来の時間の流れを体感させてくれる。訪れた季節の食材、店主の人柄、空気感——どれもランチのメニューと同じくらい、その日の葉山を決定づけるものだ。週末に訪れるならば、開店直後の時間帯を狙うか、事前に電話で空席を確認しておくと確実だ。葉山のカフェは、行き当たりばったりに歩くなかで見つける一軒が、いちばん心に残ることも多い。

