観光
江の島に息づく、龍と弁財天の物語
龍神伝説と弁財天信仰が今も残る、湘南のシンボル。
江の島の中心にそびえる江島神社は、龍神と結びついた弁財天信仰の聖地として長い歴史を刻んできた場所だ。辺津宮の境内にある八角のお堂・奉安殿には「八臂弁財天」と「妙音弁財天」が祀られている。社伝では、欽明天皇13年(552年)に島の洞窟(現在の岩屋)に神を祀ったのが江島神社のはじまりとされ、三つの宮のうち辺津宮は、建永元年(1206年)に良真が三代将軍・源実朝に願って創建したと伝わる。鎌倉時代には源頼朝が岩屋に籠って戦勝を祈願し、八臂弁財天と鳥居を奉納したとされ、江戸時代には弁財天詣でを目的とした庶民の旅がひとつのブームとなって、その賑わいの様子は数多くの浮世絵にも描き残されてきた。
参道である江の島弁財天仲見世通りを抜け、幾重にも折り重なる石段を上りきったところに、辺津宮の境内が広がっている。さらに奥へ進むと中津宮、そして奥津宮へと続いていき、中津宮へ向かう参道には、江戸歌舞伎の市村座と中村座が奉献した一対の石燈籠も残る。こうした古い信仰の足跡をたどりながら歩を進めると、視界の先には相模湾の広がりが飛び込んでくる。今でこそ江の島は観光地として多くの人で賑わっているが、その足元には、千年以上にわたって積み重ねられてきた信仰の厚みが、今も静かに息づいている。
島の奥には、江の島弁財天信仰の発祥の地とされる洞窟「江の島岩屋」もあり、日蓮をはじめ多くの名僧がここで行を積み、源頼朝も籠って祈願したと伝えられている。岩屋の真上には龍宮大神を祀る龍宮が建ち、龍神と弁財天の結びつきを今に伝えている。江島神社は「日本三大弁財天」のひとつに数えられ、初詣の時期には仲見世通りから境内にかけて長い行列ができるほどの混雑ぶりを見せる。境内をひと通り巡るだけでも小一時間はかかるため、江の島観光の際には弁財天信仰の歴史を意識しながら、時間に余裕を持って参拝するのがおすすめだ。
湘南Doors編集部が江の島を歩くたびに感じるのは、観光地としての賑わいの奥に、こうした信仰の歴史が何層にも積み重なっているということだ。仲見世通りの喧騒を抜けた先にある静けさこそ、この島の本当の魅力なのかもしれない。
アクセスは小田急線の片瀬江ノ島駅、江ノ島電鉄の江ノ島駅、湘南モノレールの湘南江の島駅のいずれからも徒歩圏内で、江の島弁天橋を渡って島へ入るのが基本のルートになる。参道沿いには食事処や土産物店が連なっており、参拝の前後に湘南の味覚を楽しむことができる。信仰の場としての静けさと、参道の賑わいという対照的な魅力が、同じ島の中に同居している。
湘南Doors編集部では、こうした信仰にまつわる場所を「文化」カテゴリの記事ともあわせて取材しており、江の島をより深く知りたい人にはあわせて読んでいただきたい。