観光
あえて丘を選んだ、日本でも珍しい懸垂式
大船と江の島を14分で結ぶ、レールにぶら下がって走るモノレール。
鎌倉市の大船駅と藤沢市の湘南江の島駅を結ぶ湘南モノレールは、車体がレールから吊り下がって走る「懸垂式」を採用した、日本でも数少ない路線のひとつである。昭和45年3月、三菱重工業によるモノレール生産のモデル路線として開業し、当初は大船から西鎌倉までの区間からスタート、翌年に湘南江の島まで延伸された。あえて起伏の激しい丘陵地帯にコースを敷いたのは、跨座式モノレールに対する懸垂式の優位性を実証するためだったとされており、最大74‰という急勾配、最小曲率半径100メートルという急カーブが随所に設けられている。
最高速度およそ75km/hで駆け抜ける乗り心地は、初めて乗車する人にとってはまるでジェットコースターのような驚きを伴う。全線単線でありながら、途中の駅で列車が行き違う仕組みが整えられているため運転本数は多く、日中は前の駅ですれ違いを終えてから発車するダイヤが組まれている。「江の島への近道」というキャッチフレーズの通り、観光利用はもちろんのこと、沿線に暮らす人々にとっては通勤・通学の足としても欠かせない存在であり、この技術と運行の経験は後に千葉都市モノレールの建設にも活かされている。
観光で利用する場合は、沿線施設の割引特典がついた「湘南モノレール1日フリーきっぷ」や、新江ノ島水族館の入場券とセットになった「モノレールdeえのすい」といったお得な切符も用意されている。一方で平日の朝7時15分から8時30分ごろにかけては通勤・通学利用者で混雑率が150%を超えることもあり、観光目的で乗車する場合はラッシュの時間帯を避けて9時以降に利用するのが快適に楽しむコツだ。
急な勾配を駆け上がるモノレールの車窓から見える景色は、湘南という地域が海だけでなく丘陵地帯も抱えていることを教えてくれる。あえて険しい道を選んだ路線の歴史そのものが、湘南の多面的な魅力を映し出している。
運賃は区間によって異なるが、大船から湘南江の島までの全区間でもワンコインでお釣りが来る程度と、観光利用の心理的なハードルは低い。丘陵地帯を縫うように走る車窓からは、住宅街の合間に相模湾がちらりと見える瞬間もあり、江ノ電とはまた違った角度から湘南の風景を楽しむことができる。
湘南モノレールとあわせて、江ノ電や新江ノ島水族館の記事も読むと、藤沢・鎌倉エリアの交通と観光の全体像がつかみやすくなる。
沿線には桜の名所も点在しており、春先に乗車すると、車窓越しに満開の桜と海の両方を楽しめる季節限定の景色に出会えることもある。