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椿の季節に訪ねたい、江の島サムエル・コッキング苑と現存唯一の温室遺構
冬から春にかけて椿が咲く江の島の頂上の庭園。その足もとには、明治の貿易商が造った温室の遺構が今も残り、中に入って見学できる。
江の島の頂上部に広がる「江の島サムエル・コッキング苑」は、明治15年(1882)からイギリスの貿易商サムエル・コッキングが造成した和洋折衷の庭園跡を、公園施設として整えた場所だ。神奈川県の観光情報によると、苑内では1月から3月にかけて250種500本もの椿が咲き、5月と10月にはカナダのウィンザー市から贈られた深紅のバラが花開く。冬の終わりから春先にかけての江の島を歩くなら、まず足を運びたい庭園である。
この庭園でもう一つ見逃せないのが、コッキングが造った温室の遺構だ。運営する江ノ島電鉄によれば、コッキングの温室として現存する唯一の遺構で、平成14年(2002)のリニューアル工事の際に発見された。明治の造園当時、温室は東洋一の規模を誇ったとされ、藤沢市の観光公式サイトは、かつての庭園に広さ660平方メートルもの温室があったと紹介している。
遺構からは、当時の温室の仕組みもうかがえる。基礎は煉瓦造りで、石炭による蒸気で室内を温めていた。水道設備がなかったため、雨水を貯めて使う循環の仕組みも備えていたという。文化資料としても土木技術の資料としても貴重なもので、実際に中に入って、その空気を感じることができる。
令和3年(2021)から令和4年(2022)にかけてのリニューアルでは、ガラス張りの床から遺構を見渡せる「温室遺構展示体験棟」が整備され、コッキングの歩みも知ることができるようになった。花を眺めて苑内を歩き、最後に足もとの煉瓦に目を向けると、140年あまり前にこの島の頂で植物を育てた人の姿が少しだけ近く感じられる。
苑内では季節ごとに花を生かしたイベントも開かれており、2025年の春には、花で苑内を彩る「春歓」が開催された。催しの内容や時期は年によって変わるため、訪れる前に公式サイトのお知らせで確認しておきたい。椿の咲く季節に、花と歴史の両方を味わいに出かけてみてほしい。