グルメ
大正生まれの精肉店が、街の台所を支え続ける
100年以上、地元の飲食店の仕入れ先であり続ける精肉店。
大正13年(1924年)創業の肉のホドシマは、辻堂で長きにわたって地元の人々に愛され続けている精肉店である。ブランド肉であるかどうかにはこだわらず、品質そのものを最優先するという姿勢を一貫して貫いており、地元の数多くの飲食店への卸売りも長年にわたって担ってきた。派手な宣伝をするわけでもなく、観光ガイドの表紙を飾るような存在でもないが、辻堂という街の食を裏側からずっと支え続けてきた、いわば「暮らしのインフラ」ともいえる店である。
近年は湘南T-SITEやテラスモール湘南といった大型商業施設が相次いで開業し、辻堂の街の風景は目まぐるしく変化を続けている。移住者が増え、新しい店舗が次々と生まれていく一方で、こうした昔ながらの商店が今もなお現役で営業を続けているという事実こそが、辻堂という街の奥行きをつくり出している。新しいものと古いものが違和感なく同居しているというこの街の性格は、湘南Doorsが取材を続けるうえでも重要な視点のひとつになっている。単なる懐かしさではなく、今も現役で機能しているという点にこそ、この店の価値がある。
こうした個人経営の精肉店は、地元の飲食店にとって、単なる仕入れ先ではなく、味づくりを支えるパートナーのような存在でもある。ブランドや知名度ではなく、実際に扱う肉の質と目利きの確かさで長年の信頼を積み重ねてきたからこそ、時代が変わっても選ばれ続けているのだろう。辻堂のように新しい店舗が次々と生まれる街だからこそ、こうした昔ながらの商店が持つ「変わらなさ」に価値が見出されるようになってきている。
派手さのない精肉店が、街の食を長く支え続けてきたという事実は、地域経済の本当の強さがどこにあるのかを教えてくれる。新しい店が増える街だからこそ、こうした老舗の存在価値はより際立って見える。
辻堂駅周辺の商店街の中に店を構えており、地元の人々が日常的に買い物に訪れる生活動線の中にごく自然に溶け込んでいる。観光客が訪れることは少ないが、だからこそ辻堂という街のありのままの日常を感じられる場所のひとつだと言えるだろう。
同じ辻堂エリアの湘南T-SITEやテラスモール湘南の記事とあわせて読むと、新旧の商業が同居する辻堂の街並みの全体像がつかみやすくなる。
精肉店の店先には、その日仕入れた肉を使った日替わりの惣菜が並ぶこともあり、通りがかりに立ち寄って買い求める地元客の姿も見られる。

